忍者ブログ
MASTER →  ADMIN / NEW ENTRY / COMMENT
夢をメモするからユメモ。秩序も筋道もないユメモ。
プロフィール
HN:
ゆき
HP:
性別:
女性
自己紹介:
夢をメモする習慣があると脳が活性化するというのは本当だろうか。

前略プロフ
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

高校生だった。
校内はスーパーのフードコートのようなものがあり、マクドナルドや菓子店などが入っていた。
食事をするためのスペースと、買い物をするためのスペースは、廊下を一本隔てていた。
売店の集まる場所には、入り口にガラスの自動ドアがあった。
昼休みや放課後などに利用する生徒が多くいた。

私も友人と、おやつを買ったりしていた。
卵を使った黄色の丸いカステラの中に、カスタードクリームが入っていた。
先生も売店を利用しており、時々、図書室の先生を見掛けた。
図書室の先生は人気があって、男子生徒が、
「先生、一緒に食べよー」
などと、誘ったりしていた。
先生は、仕事があるはずなのに、
「しょうがないわねぇ、じゃあちょっとだけね」
と、生徒のお茶に付き合ってくれた。
私もこの、穏やかで優しい先生が好きだった。

私は日課のように図書室へ通っていた。
広い図書室だったような気がする。

私は3年生だったが、進路が決まらずにいた。
周りの友達は、どんどん決まっていくようだった。
私には、進学も就職も選べなかった。
病気だから、何もできなかった。
高校を卒業した後は、療養生活をすることになっていた。
進学も就職も決められない自分が嫌で、引け目のようなものを感じていた。
図書室へも、足を運ぶことがなくなった。
あの先生に、情けない自分を見られたくなかった。

しかしある日、私は図書室へ行った。
広い図書室で、先生が私を見つけて、
「ゆきさん、久しぶりね」
と言ってくれた。
先生は、私の進路が決まらないことを知っているはずなのに、変わらず優しかった。
私が進路について気にしていることがわかるように、先生はその話題に触れなかった。
何か優しい言葉をかけてくれた気がする。

卒業式の日、式の始まる前の慌ただしい雰囲気の中、たまたまその時一緒にいたクラスメイトが、
「ゆきちゃん卒業したらどうするの?」
と、尋ねてきた。
まぁ会話のきっかけとしては当たり障りのない、この時期の私たちならよく交わす会話なのだろう。
背中まで真っ直ぐに伸びた黒髪の子で、眼鏡をかけていた。
黒髪も眼鏡もよく似合う、顔立ちの綺麗な子だった。
彼女に悪気がないのはよくわかっていた。
しかし彼女の言葉は私の心を曇らせた。
私は、病気のため進学も就職もできないことを話した。
それから彼女は進路の話題は出さなかった。
私は、自分の高校生活を振り返っていた。
私のここでの思い出は何だろう、と思った。
部活動も熱心にしたわけではない。
部室に入り浸ったこともあったが、他の部員ほどの感慨を私は感じていないだろう。
図書室が居場所だったような気もするが、それももう遠くに行ってしまった。
私には、これという思い出が見つけられなかった。
私の高校生活は空虚だったのだ、と思った。
そして、先へ進む道もない。
何だか虚しかった。
そういうことに耽りながら、クラスメイトと廊下を歩いた。

紅白幕で彩られた華やかな式場とは対称的に、そこから伸びる廊下は薄暗かった。
外の天気が荒れていたのだろう。
PR
≪  18  17  16  15  14  13  12  11  10  9  8  ≫
HOME
忍者ブログ [PR]