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夢をメモするからユメモ。秩序も筋道もないユメモ。
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ゆき
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女性
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夢をメモする習慣があると脳が活性化するというのは本当だろうか。

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教室にいた。
外は雨で、暗いようだった。
朝のホームルーム前のようで、教室はにぎやかだった。
私は隣の席の男子や、周りの席のコたちと、仲良くおしゃべりをしていた。
隣の男子は今ハマっているキャラクターがあるということで、そのキャラクターの話で盛り上がっていた。
私もそのキャラクターは好きだった。
「一週間に一度新しいバージョンが出る」
と話しながら、キャラクターのグッズを並べていた。

私はハミガキをしていて、そろそろ口をゆすごうかな、と思っていた。
「ハミガキなんてこんなところでしないで欲しい」
と、クラスの女子の一人が話しかけるでもないが、しかし確かに私に聞こえるように言った。
短いスカートのコだった。
私は、その言葉を聞いて、すぐに教室の前の方にある流しへ向かった。
「ココでハミガキしちゃいけなかったんだ…!」
私は少し焦った。
クラスの誰かを不愉快にしたその行動は、些細なきっかけであるが、イジメに繋がらないとも限らないからである。
特に私は、制服のスカートを短くするタイプの女子が怖かった。
イジメられたくない!
仲間外れにされたくない!
その時私の心の中は、8割方イジメへの不安が占めていた。

そこへ担任の先生が入って来て、みんなは席についた。
私はまだ口をゆすいでいなかったので、教室の前の方にある流しに向かった。
教室には流しが3つあった。
真ん中に、普段みんながメインで使っている流し。家庭の台所にあるようなステンレスである。
右は手洗いなどに使う流し。学校の水飲み場のような石のような材質のタイプで、蛇口は2つあった。
左は教室の前というより横の壁についていて、理科室の実験器具を洗うような、蛇口が3つついている。こちらも材質は石のようなものである。
私のように、まだ朝の準備が終わらないらしく、流しの前に2人の女生徒がいた。
右と左に一人ずつである。

私は、メインである真ん中の流しが使われていないことを不思議に思いながら、真ん中へ向かった。
先生は、ホームルームの時間になってもまだ支度のできていない生徒がいることで、少し不機嫌だったかもしれないが、いつものこと、と教室の左隅のパイプ椅子に腰かけて黙って待っていた。
私が真ん中の流しに向かうと、そこはちょうど掃除の途中で、三角コーナーと排水溝に設置して使うあの筒型のゴミ取りが置いてあった。
ゴミが少し散らかっていた。
ココをこのまま使っては、後々文句を言わせる種になるかもしれない、と思いそこから離れた。
私がメインの流しを使えないことを、教室の生徒たちが心の中で嘲笑っているような気がした。
私は内心ビクビクしながら、他の二つの流しを見た。

私の席は、教室を真ん中から縦に分けたら右側であるから、左の流しを使うことは不自然に思えた。
それに左の流しは滅多に使われることがなく、そこを使うのは、真ん中や右を使うことを許されない者くらいであった。
その左壁側の流しには、今クラスで無視されている女の子がいた。
彼女の支度が遅れたのは、朝からイジメられ、邪魔され、時間をとられてしまったからだと思われた。
蛇口が3つあるので、さほど窮屈ではないだろうが、わざわざそこへ行き彼女と二人並ぶことによって、イジメの標的が自分になる可能性がいよいよ強くなるような気がした。

右の流しは蛇口が2つしかないので、二人で並べば窮屈になることは必至だった。
右の流しには、クラス全員から無視とまではいかないものの、中心グループからイジメられている女の子がいた。
そのコと並ぶことも、やはりイジメグループの餌食になりそうで怖かったが、左の女の子と並ぶよりはマシに思えた。
それに席が近いのだから、こちらを使う方が自然である。

私は、右の流しへ向かった。
先にいた女の子は、入れ違いで席に戻ったのか、私は流しの前で一人になった。
ココも、メインの真ん中から追い出された者が使う場所であった。
しかしちょっとした用事くらいなら、こちらで済ませる者もおり、やはり左よりはいくらかマシと言えた。
それでもイジメグループを中心とした、クラスメイトが嘲笑うような空気は、背後から感じとることができた。
さらにその中心にいるのは、先程嫌味を言ってきた、あのスカートの短い生徒である。
もうほとんどの生徒が席についているというのに、自分だけまだポツンと流しの前にいるということで、余計に居心地が悪かった。

ひたすら嫌な視線に耐えながら流しの前にいると、それまで黙っていた先生が、
「お前ら、そういうことでいいと思ってるのか!」
と、突然声をあげた。
私に送られている蔑むような嘲笑うような視線と、それに逆らったり制止しようとせず黙りこくって我関せずの態度をとっている生徒の存在に、先生は気づいていたのである。

しばらくして、しんとした教室から、さっき仲良く話していたあの隣の席の男子の声がした。
「その新しいのとって来て!」
顔を上げると、流しの正面の壁に、さっきそれで盛り上がったばかりの、例のキャラクターグッズがぶら下がっていた。
キャラクターがチョコレートパフェに埋まって、クリームから顔を出しているというストラップのようなものだった。
これが「一週間に一度出る新作」の、最新バージョンらしい。
かわいくて、私も欲しいと思ったが、それは一つしかなかった。
これを逃せば手に入らないだろう。
彼の顔はこわばっていた。
彼もまた、イジメの標的になることを恐れているのである。
私は一瞬迷って、
「ほら、受けとれ!」
と言い、彼へ向かってグッズを投げた。
後で自分で取りに来れば済むものを、彼は勇気を出して、私を嫌な雰囲気から助け出すために声をあげてくれたのだ。
それに私より彼の方が、このキャラクターのことを好きである。
彼はうまく受けとることができずに、グッズは彼と彼の椅子の隙間に挟まった。
「ちゃんと取れなかったからダメ~」
と、私は彼に向かって少し意地悪を言った。
何だか恥ずかしくて素直に感謝を表すことができなくて、私はわざと受けとれないような場所へ向かってグッズを投げたのである。
「えぇ~!」
と、彼が困った顔をすると、周りの席の仲間が口々に、
「そうだそうだ、ダメだぞ」
などと笑いながら彼を困らせていた。
彼の周りに笑い声やふざけ合う声が集まり、それはまだ教室の前の方にいる私とも繋がっていた。
居心地が悪く嫌な感じの、あの雰囲気は、それによってかき消された。
私は彼に助けられ、あわよくばと私を狙ったイジメグループは、獲物を逃した。
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私はサッカーチームに所属していた。
チームに、身体が思うように動かない、頭痛がするという症状を訴えたメンバーがいた。
症状は危険と判断され、練習が中断された。
症状を訴えたメンバーは、隔離され、安静にしているらしい。
他のメンバーを一堂に集め、キャプテンが、
「何故彼だけがこのようになったのだろう。とにかく原因や対処法が全くわからない」
というようなことを話していた。
原因不明の奇病として扱われているようである。
実は私も黙ってはいたが、同じ症状であった。
自分も同じ症状だから分かるのだが、これはそんなに大騒ぎするようなものではない、と感じていた。
筋肉痛のように、放っておけばすぐ直るという類のものだ。
原因は大方疲労といったところであろう。
口が思うように動かず、喋ることができなかったので、それを伝えられなくて困った。
「彼だけじゃない!自分もだ!!」
と、心の中で訴えるしかなく、キャプテンはもちろんそれに気づいてくれるはずもなく、歯がゆい思いをしていた。
その時、先輩メンバーの一人が口を開き、症状がでているのは彼だけではないというようなことを言った。私は、
「先輩!そう!そうなんだよ、大騒ぎするようなものじゃないんだよ!!」
と、また心の中で言った。
そして先輩は、自分もそうである、と告げた。

「奇病」の犠牲者が二人も出たということで、チームはミーティングハウスに向かうことになった。
ミーティングハウスは、私の自宅だった。
自宅へは、先輩と、姉と私の三人で向かった。
姉がたずなを握る、小さな荷馬車で向かった。
私は御者席の姉の隣に座り、先輩は後ろの荷車の方へ乗った。
家に向かいながら、
「こうして馬車に乗るなんて久しぶりだわ。小さい頃は、よくゆきも乗っていたんですよ」
と、姉が後部の先輩に、話すともなく話していた。
先輩は、いかにも「自分はかわいそうな病人です」といった態度をとっていたが、姉の話には元気そうに相槌を打っていた。
先輩は女性好きで自分がかわいくて、我が道を行くという性格であった。
「コレが大したことのないものだって先輩もわかっているはずなのに、大袈裟に病人ぶるなぁ」
と、私は苦笑する思いであった。
先輩は、「病気でかわいそうな自分」を演出しており、それによって周囲からチヤホヤされたいと考えているようであった。
しかし私は、基本的には明るく面倒見のよいこの先輩が嫌いではなく、仲良くしていた。
先輩の病人ぶって気をひこうという子供じみたその行動は、苦笑する程度にとどまるもので、決して嫌な気分になるようなものではなく、むしろかわいいような気さえしていた。
彼の人柄のなせる業であろう。

自宅に着くと、もうみんな集まっていた。
茶の間へ顔を出すと、みんな我が家のようにくつろいでいた。
誰ともなく、
「お前もさっさと検査してもらって来いよ」
と声がしたので、返事をして隣の部屋の顧問医師のところへ向かった。
「隙間は気をつけろよ!」
という声が茶の間からして、首を傾げつつ廊下に出た。
先輩は、先にもう医師のところへ行っていた。
廊下では、何人かのメンバーが足でボールを操っていた。
医師の行うテストの一つなのであろう。
しかし人が一人か二人通れる程度の狭い廊下では、広い屋外のように身体を動かすことができず、みんな苦戦していた。

顧問医師の部屋へ入ると、先輩もすでに隔離されていた。
医師は難しい顔をして、
「全くわからん…」
というようなことを誰にともなく話していた。
だからそんなに深刻なもんじゃないって…と、内心思いつつ、先輩の様子を見ることにした。
隔離と言っても、無菌室や特別な部屋に入れられているわけではなく、医師のいる部屋の押し入れで休んでいる様子であった。
先輩は眠っているだろうか、と思いながら、押し入れの引き戸がわずかに開いてできた隙間へ、様子を探るように手をかけた。
そっと引き戸を開けようとすると、勢い良く戸が閉まり、私は中指を挟んでしまった。
強い痛みを感じながらびっくりしていると、さっと押し入れの戸が開けられ、中で先輩が楽しそうに笑っていた。
わざと戸の隙間を作っておき、人が手をかけたら思いきり挟むという悪戯である。
茶の間で「隙間に気をつけろ」と言われた意味がわかった。
「いったーい…何するんですか、もう!」
と、私が顔をしかめながら怒ってみせると、先輩はさらに満足そうに笑った。
この時には私は、喋ることができるようになっていた。
先輩のいた押し入れは上の段に布団が敷いてあり、簡易ベッドのような使われ方をしていた。
「私も入ってみた~い♪」
と、布団の上に両手を伸ばすと、
「ここは俺の場所だからダメー」
と、先輩は意地悪に笑った。
私は先輩との、こういったじゃれあいが好きで、先輩が構ってくれるのが嬉しかった。

そうしてふざけあっていると、先輩がふいに「ベッド」から下りて、押し入れの外へ出た。
押し入れの外はもちろん顧問医師の使っている部屋で、そこには一番初めに「症状」を訴えたメンバーがいた。
男性のはずだったそのメンバーは、この時には可愛い女性になっていた。
先輩は、そのメンバーの肩を抱くと、
「俺たち二人だけが原因不明のこんなんになって…俺こういうの運命感じちゃうんだけど」
と言った。
私は、どうせ大したことないくせに、と思った。
先輩だって自分の身体なのだから、わかっているはずである。
わかっているからこそ、悲観もしないし悪戯をしかける余裕もあるし笑うこともできるのである。
それに二人だけじゃない、私だってそうだ、と思った。
先輩は「奇病」を利用して彼女に接近していた。
肩を抱かれた彼女は、どうしていいのかわからないという風に、うつむいていた。
このメンバーは、自分が本当に未知の難病にかかってしまったと思い込んでいるようで、沈んだ様子である。

私は嫉妬した。
先輩の言葉は本気ではなく、いつものように少しふざけているだけだとわかっていた。
先輩は、女性であれば誰彼構わず、こういう冗談を言う人なのである。
それでも、私は仲の良い先輩をとられたようで、嫉妬してしまっていた。
うつむいているそのメンバーを憎む気持ちもなかったし、先輩を非難するような気持ちもなかった。
ただ、先輩は面倒見が良く人懐っこく、それは誰に対してでもそうであって、自分だけが特別なのではないと思い知った。
私は先輩の性格を知っていたはずなのに、無意識のうちに自分は先輩と特別仲の良い存在なのだと、思い込んでしまっていたのである。
犬がベッドから下りる音で、目が覚めた。
布団をめくって、
「おいで」
と言うと、犬は素直にまたベッドに戻った。
散歩に行くにはまだ早いと、再び眠りについた。
ベッドに戻ったはずの犬は、私が眠っている間にまた下りたらしく、下の方からカタカタと何かをしている音がする。
…そろそろ散歩へ行かなくては。
そう思って、また寝た。


犬と散歩へ出かけた。
私は眠かったが、外はいいお天気だった。

ふと気づくとベッドの上だった。眠っていた。
散歩へ行かなくては。


犬と過ごしていた。
かわいい犬と過ごしていた。
ただ、犬が傍にいるという感覚だけがあった。

ふと気づくとベッドの上で、犬の首輪を手で押さえたまま眠っていた。
いい加減散歩へ行かなくては。


犬と過ごしていた。
あのかわいい犬と過ごしていた。
ただ、犬が傍にいるという感覚だけがあった。
別段何が起きたというのでもない。

電話で目を覚ますと、犬が私の顔をべろんべろんと舐めていた。
もう本当に起きて散歩へ行かなくては_| ̄|○

…こういうことってよくありますよね。
先日産婦人科を受診した際に、診断結果を伝えるので電話をして欲しいと言われていて、その電話をしていた。
受話器越しの医師の声は若く、診察した医師とは明らかに違った。
医師の声はボソボソとしていて聞き取りづらかった。
一生懸命耳を澄ませ、メモをとりながら電話をしていると、妹が大音量でテレビをつけ、楽しそうに話しかけてきた。
電話の声はいよいよ聞き取りづらくなった。
しばらく無視していたが、我慢ができなくなって、
「今大事な電話してんの!」
と、妹に言った。
妹はすまなそうにして、テレビの音量を下げた。
それからまた医師の話に集中すると、
「このままではお腹から石が出てきてもおかしくありませんね。出てきませんか?」
と言われた。
石は出ていない、と答えた。
「お腹から、というのは腸の方ですか?子宮の方ですか?」
と尋ねると、
「尿道ですね」
と言われた。
尿道結石ってヤツか?と思った。
医師は、カルテを見ながら話しているようで、カルテには「この患者は生意気で扱いにくい」というようなメモがいくつかしてある、と匂わせた。
そして少し嫌味っぽく、
「検査の時にノートパソコンを見たんじゃないですか?」
と言われたので、
「ノートパソコンなんてありましたっけ?覚えていません。見たかもしれません」
と言った。
少し腹が立ったので、
「見られて困るようなら目につかないとこに置いておくべきでしょう」
と言った。

その後、別の日、病院に来ていた。
婦人科の診察を終え、帰るところで、待合室に高校の同級生の姿を見つけた。
声をかけようかどうかと迷っていると、
「久しぶり!」
と、同級生が話しかけてきた。
「久しぶり」
と私は答えた。
同級生の顔はやつれ、頬がこけて見えるほどであった。
表情が、フツウでなかった。
心を病んでいるな、と確信に近いくらいに感じた。
同級生は、待合室の椅子の上に横になって、伸びをした。
「ココってリラクゼーションルームみたいで好き」
と言った。
総合病院の普通の殺風景な待合室である。
彼女のおかしな言葉は、余計に彼女の心の病を感じさせた。
「ここは健康ランドじゃないよ」
と私が言うと、
「そうだね」
と、彼女は笑った。
そして急に興奮して顔を近づけ、
「知ってる?今日K(地名)に、ディズニーの声してる声優さんが来るの!」
と話し始めた。
彼女はディズニーが好きらしく、大イベントのようだが、私はあまり関心がないので、愛想笑いをしていた。
そこへ同級生がもう一人来た。
こちらは今でも交流のある、友人である。
「久しぶり」
と、砕けた挨拶をした。
友人は同級生の状態のことをわかっているようだった。
3人で少し話して、友人が、
「ちょっとトイレに言って来る」
と言ったので、
「私も」
と、二人でトイレへ向かった。
この病院にはいたるところにトイレがあった。
トイレのドアを開けると、少し広めの個室に和式便器があった。
不衛生な臭いが鼻をついた。
誰かが落としたらしい丸まったトイレットペーパーが木の床にあったので、蹴って便器の中に入れた。
ドアの鍵を閉めようとしたら、古いようでうまく閉まらない。
念のため内側からドアを押してみると、あっさり開いて、鍵の意味などなかった。
古い病院なので、改築などを繰り返すうちに、トイレだけが残ってしまったのかもしれない、と思った。
その古いトイレは、窓が開けられ、それによって申し訳程度に換気されていた。
蹴り入れたトイレットペーパーだけを流して、私はそのトイレを使用せずに出た。
鍵がかからないからである。
トイレを出てみると、薄暗く狭い通路の、トイレと同じように木でできた壁に、少しの排泄物とトイレットペーパーがこすりつけられていた。
総合病院なので、いわゆるボケてしまったお年よりが入院していて、そういう人がしたのかなぁ、と思って、また待合室へ戻った。

待合室へ戻ると、同級生がちょうど帰ろうとしているところだった。
この時には、私は彼女の名前が「美和」だと思い出していた。
「美和ちゃん!」
と呼ぶと、下りのエスカレーターに乗った美和ちゃんが、にこやかに微笑んで、手を降りながら、やがて見えなくなった。
美和ちゃんの笑顔があまりに元気そうで、逆に不自然だった。
彼女を一人にして大丈夫だろうか、という不安が胸にあった。
美和ちゃんがエスカレーターの動きにより完全に視界から消え、私がどうしようかと迷っていると、友人が戻って来た。
美和ちゃんが行ってしまったことを伝えると、友人が焦った様子を見せた。
やはり彼女を一人にしてはならなかったのだ。

二人で美和ちゃんを探した。
「今日Kでディズニーのイベントがあるって言ってたから、電車乗るかも!」
と、友人に伝えたが、しかしKという地名はこの辺りだけでも複数あることを思い出し、
「どこのKかわかんないな」
と独り言のように付け加えた。
外はすっかり暗くなり、雪が降っていた。
街はイルミネーションで華やかに飾られていた。
明るく照らされた街の、暗い影になった場所へふと目をやると、美和ちゃんがいた。
驚いて目を丸くした美和ちゃんと目が合って、お互いわずかな時間動きを止めた。
美和ちゃんは、華やかな街とは対照的に、忘れられたように暗い場所にあるゴミ箱をあさっていた。
彼女は、大きなクリスマスケーキの箱を片手に持ち、もう一方の手では誰かが捨てた、長い棒状のお菓子のゴミを持っていた。
飴の棒のようであった。
美和ちゃんは、特にその棒が欲しかったわけでも、ゴミ箱から何か拾いたいと思ったわけでもなく、ただ意味もなくゴミ箱に向かって、何かを紛らわしているだけだと、私は感じた。
友人も私達に気づき、こちらへやって来た。
美和ちゃんは私達から逃げようとしたが、友人が止めた。
クリスマスケーキの箱が美和ちゃんの手から落ちた。
その衝撃で箱が開き、崩れてしまった2つのケーキが見えた。
友人の美和ちゃんに対する態度で、何となく理解した。
彼女は一人で2つのケーキを食べようとしていた。
美和ちゃんのケーキは、普通に家族で囲むものより一回り小さかったが、2つ合わせれば普通のケーキ1つより多くなるだろう。
美和ちゃんは、過食をしている。
彼女は一人暮らしだと直感した。
私は、保健室の先生が生徒の手当てをするときのように落ち着いたそぶりで、何も気づかないかのように、箱についた白いクリームを手でぬぐい、また元通りに箱のフタをした。
友人は、全て知っているようだった。

しかし美和ちゃんはもう、知られていることがわかったようで、雪の上にぺたんと座りこんで、泣いていた。
「美和ちゃん、どうしてこんななっちゃったの?」
と、問いかけると、激しく泣きながら、辛さを吐き出すように、美和ちゃんは話した。
付き合っていた彼氏に、「生きている価値がない」「ダメな人間」「役立たず」、そのような内容の暴言を常に浴びせられ、やがて自分でもそう思い込むようになった。
自分は生きていて良いのだと思いたい気持ちと、いや自分には生きる価値などないのだと思う気持ちとが葛藤し、我慢できないほど辛いのだということが、ひしひしと伝わってきた。
それで美和ちゃんは、その辛さを誤魔化すために過食をしたり、ゴミ箱をあさるなどの意味のない行為をしてしまうのだ。
街のイルミネーションの光がわずかに届く程度の暗いゴミ箱のわきで、私は泣きじゃくる美和ちゃんの背中をさすり続けた。
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